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Essay
頬杖つくあのコ
Essay : 100223
Photo : 100221
頬杖つくあのコ。どこにでもある電車に揺られながら。
お気に入りのカメラを持って、海に行く。
日曜の朝は、時の流れがゆっくりと感じられるから好き。
晴れた日には、窓からこぼれる日差しが柔らかくて落ち着くの。
あの海へは終点まで。冬だから誰もいないの。
ひとりになれたりするから、外をボーっと眺められたりするんだよ。
ある日ね。4人家族が乗ってきたの。その車両には、ワタシとその家族だけになってね。お父さんは新聞読んでて、小さな娘さんを膝の上に座らせながら、新聞記事を指さして小さな声でお話ししてるの。お母さんは隣の一番前に座ってて、座席の上に立ちながら景色を眺める息子さんを抱えてニコニコしてるの。ワタシはその向かいに座って見てたんだけど、とっても幸せそうだった。たぶん小学校低学年ぐらいだと思うんだけど、息子さんの目はお父さんそっくりだし、お父さんに甘えながらべったりくっついてる娘さんはたぶん次女で、あのお母さんが子供の頃はこんな感じでかわいらしい少女時代だったんだろうなぁ。と思って。。。そんなことを想像してたら、アナタの少年時代を知るには男の子。ワタシの少女時代を知りたいんだったら女の子が産まれてくればいいと考えちゃって。。。あ、こんな話イヤよね。ゴメンね。あんまりにも幸せそうな家族だったから、つい。
そう言って、頬杖ついて窓の外を眺めていたキミ。
冬の日差しが淡く照らす横顔を眺めながら、
ボクとキミとの間に産まれてくる子供を黙って想像していた。
とても穏やかで柔らかな空間だったことを、今でも鮮明に覚えている。
* * *
あれから数年が過ぎた、冬の晴れた日曜日。
頬杖つくボク。誰もいない電車に揺られながら。
お気に入りのカメラを持って、海に来た。
あのコの面影を追いに、ひとり。