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遅まきながら、あけおめ。こんなカンジでたま〜に更新するので、ことよろ。
で、今年一発目はエッセイ風味で昨日あった出来事を書きまする。
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あの文字のような線
Photo : 091024
Essay : 110111
昨日の夕方、このクソ寒い中、スーパーへ食料を買いに行った。明日分の食料を買い、レジを通してリュックに買ったモノを詰め込んでいると、お母さんとカートに乗せられている小さな女の子が近付いてきた。そしてボクの隣にその子をカートから棚の上に乗せかえ、女の子を挟んでお母さんと一緒に詰め込み作業をする状態になった。それでたびたびその子と目が合い、ニコニコしていたんだけど、その子がおもむろに壁面ガラスに人差し指を向けた。この日もスーパーのガラスは寒さで曇っているので字が書ける。「何書くんだろ?」と思っていたら、字を書こうとしているんだろうけど、まだ文字を知らない年齢でぐちゃぐちゃな線だった。「ん?何かな?」のような顔をその子に無言で向けたらニコニコと笑ってくれた。ふたりでニコニコ顔になり、とてもほほえましい光景になった。
幸せ気分のままその場を後にし、外に出て缶コーヒー片手にタバコを吸おうと思い、あの字の反対側にまわった。ガラスだから反対側からもあの字のような線が見られる。タバコを吸いながらぐちゃぐちゃな線を見ていると「は!」と忘れていた自分の過去が何十年ぶりに蘇った。そういえば自分も書いていた。文字が書きたいんだけど書けないから、ぐちゃぐちゃになった英語の筆記体のような線を書いていた。たぶんあれは保育園に行く前だから3才くらいだろう。親が仕事で使っている黒電話の横に置いてあるメモ帳に「これは ○○、これは○○」と言いながら、文字ではない線を書いていた。そんな無性に文字が書きたかった記憶も蘇った。
現在、文字をつくることが好きで趣味を越えた趣味として、生涯の生き甲斐としてやっている。だからあんな小さな時から文字が好きだったことが嬉しくてたまらなかった。「この事を思い出させてくれてありがとう」と、あの子に感謝したい気分になった。
オレンジ色から紫色へとグラデーションになった夕闇せまる寒空に、あの頃に書いていたあの文字のような線を脳内に描きながら帰る。空に誰にも邪魔されない、ボクにしか理解できないグラフィックデザインができた。